鳩山由紀夫首相は23日、沖縄県を訪問し、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で、仲井真弘多知事、稲嶺進・名護市長らと相次いで会談した。首相は「代替地は辺野古付近にお願いせざるを得ないとの結論に至った」と、米軍キャンプ・シュワブ沿岸部(同県名護市辺野古)に移設する方針を初めて表明した。仲井真知事は「大変遺憾で、極めて厳しい」と述べ、稲嶺市長も「実現可能性はほぼゼロに近い」と拒否した。日米両政府は28日にも共同声明を発表するが、沖縄の反発で「5月末決着」は失敗に終わり、首相の責任が厳しく問われるのは必至だ。(3面にクローズアップ、2面に首相発言要旨、26、27面に関連記事)
「私自身の『できる限り県外だ』という言葉を守らなかったこと、その過程の中で、県民に大変混乱を招いたことを心からおわびする」
23日午前、県庁で行われた仲井真知事との会談。今月4日の前回訪問で、県外移設断念を表明した首相は、今回の訪問で「辺野古」に言及し、陳謝した。「5月末」や夏の参院選をにらみ、沖縄や社民党の反発をこれ以上招くのは不利との判断があり、政府高官や首相周辺は沖縄再訪が間近に迫っても「沖縄では首相は辺野古とは言わない」と「あいまい戦術」をとる見通しを示していた。
首相は日米共同声明でも「辺野古」を明記しない方向での調整を指示したほどだった。しかし、22日の日米審議官級協議では、最終的に米側に譲歩する形で「シュワブ沿岸部」との表現で「辺野古」を声明に盛り込むことになった。これを受けて、23日に沖縄で「辺野古」を表明しないまま月末の発表に踏み切れば、首相に対する反発がさらに増すのは明らか。最後は首相が「辺野古」明言を決断した。
「断腸の思いで下した結論」の支えとして、首相は「在日米軍の抑止力」を強調。その理由として、北朝鮮製魚雷による韓国の哨戒艦の沈没事件を念頭に、「昨今の朝鮮半島情勢からも分かるように、東アジアの安全保障環境に不確実性がかなりあり、海兵隊を含む在日米軍全体の抑止力を低下させてはならない」と、この日の会談で最近の朝鮮半島情勢に繰り返し言及した。
しかし、不安定な朝鮮半島情勢は、政権発足当初からの外交・安保課題。民主党内からも「『渡りに船』ならぬ『渡りに哨戒艦』だ」との皮肉が聞かれる。
現行案とほとんど変わらない移設計画で地元の頭越しに日米合意をし、説得材料に北朝鮮情勢を持ち出し、「抑止力」維持のためだと言って移設受け入れを迫る。場当たり的な対応に翻弄(ほんろう)され、「県外移設」の期待を裏切られた沖縄側の怒りは収まらない。
首相の行く先々では、黄色の背景に赤字で「怒」と書かれた紙を掲げる県民らが詰めかけ、「首相は公約を守れ」「県内移設反対」との声を上げた。
名護市内で開かれた首相と県北部の12市町村長との会談で、稲嶺市長は辺野古への移設について「名護市民と県民への裏切りで、極めて残念で怒りを禁じ得ない。断固反対する」と表明。追い込まれた首相は、沖縄の負担軽減や普天間の危険性除去に向けた政権の取り組みをアピールして理解を求めた。
しかし、自ら発した「県外移設」を実現できなかった首相の言葉に、説得力は乏しい。知事との会談後、首相は「5月末ですべてが終わりだとは全く思っていない」と述べ、5月末決着は断念せざるを得ないとの認識を示した。
政府は28日にも発表する日米共同声明に普天間飛行場の代替施設の工法や建設場所は盛り込まず、9月まで先送りする方針。【横田愛、青木純、井本義親】
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